マイ・リレーションシップとは英語で「私の関係」という意味です。自分を中心として、そのまわりに自分と関係のある人や、ものなどを配置してそれぞれを線で結び、自分をとりまく「人間関係図」をつくってみようというワークショップです。

 まずはじめに、講師の岡本光博さんから自己紹介として、自分がこれまでにつくってきた作品や展覧会についての簡単なお話がありました。

 各自の机の上にはあらかじめ画用紙が配られていて、真ん中に紙片が一枚はってあります。ここにまず、自分の顔、あるいは自分を示す記号を書き込むことからワークショップ「マイリレーションシップ」がはじまります。
 最初に、講師の岡本光博さんが家族は何人いますか?と質問します。家族の数に応じて、小さな紙片が配られ、それに家族の顔や名前、あるいは記号などをかきこみます。次に自分のことを思ってくれているような親戚は何人いますか?という質間がされ、その答えの人数に応じて小さな紙片が配られ、そこにその名前、あるいは似顔絵、記号などが書き込まれていきます。
 続いて好きな人は?自分の仲のいい友人は?印象に残っている先生は?好きなアーティストは?好きなタレントは?自分の守護霊は誰だと思う?かわいがっているペットは?好きな本は?好きなレコードは?好きなゲームソフトは?といった質問がつづき、おかしな質問にとまどったり、てれたりしながらも真剣に考えるうちに、参加者の手元にはたくさんの紙片がたまっていきます。

 ひととおり書き終わったら次のステップです。
「では、その紙を大事な順に3つに分けてください」という指示で、紙片に書き込んだ各自の大事な人たち・ものを迷ったり苦労したりしながら、3つのグループに分けていきます。

 すると、無情にも3番目のグループは没収されてしまいます。

 さらに、「もし、この紙片に書かれている人やモノがのった船が沈没して、一人だけ助けられるとしたら、誰を助けますか。」という問いで、えらばれた一枚を、大きな紙片に書きかえて、画用紙の自分の横におきます。つづいて、もう何人か助けられるとしたら?という問いで選ぱれた紙片を中くらいの大きさの紙片に書きかえて、その外にならべます。
 それから残りの二つのグループを、自分にとって大事なものを自分の顔の近くにならべ、間を線で結び、「好き」「信頼」「友情」など、関係を表す言葉を書き込んでいきます。
 こうして、自分の、今時点での「人間関係図」ができあがります。これは大事な人達やものにとりかこまれた、今現在の自分自身の姿です。

 ゼロからひとりで描いていくとなかなかむずかしい関係図ですが、このように少しずつ段階をふみながらつくっていくと、それまで気がつかなかった、自分の考えていることや、自分を取り巻く状況が浮かび上がってきます。
 
 できあがった関係図は、見せあったり集めたりすることもなく、自分だけの財産としてそのまま持ち帰られました。いつか将来、何年後、何十年後かにもう一度描いてみたり、辛いときに今描いた関係図を見直したりすれば、必ず何か得るところがあるから、大切に保管して下さると嬉しいんです、という岡本さんの言葉にうなずきながら、参加者は自分達の作品を大事に持ち帰ったのです。

青森県立美術館・芸術パーク カタログ「キッズ・アートワールド・青森2000」より
岡本光博 ワークショップ 2000
マイ・リレーションシップ
開催日時 平成12年8月14日(月) 8月15日(火) 各14時〜16時
会場 青森市立橋本小学校理科室